薇姫/獣帝
出てきた翔平はキョロキョロと見渡していたが、車を見て目を見開いていた。
おずおずと歩み寄ってくる。
あぁ、フルスモークだから中わかんねぇのか。
私は窓を開けるように棗に言って開けてもらった。
『翔平』
そう言うと、翔平は目を見開いて私を指差し口をパクパクと開閉させた。
………?
…あぁ、男装してないからか。
私は今、素で居る。
藍色の長い髪を無造作に下ろして銀と赤の瞳を晒している。
『………琉稀だから』
翔平はフリーズしてから息を思いっきり吐き出した。
「え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
近所迷惑。
私は車の窓から見を乗り出して翔平の頭を叩き、我に帰らせ車に乗るよう促した。
「………琉稀、さんって…」
『今頃さんづけ何てしなくていい』
「………琉稀は、何者?」
不思議そうに目を細める翔平に笑みを返して私は目を瞑った。
『お楽しみ』