注文の出来ない喫茶店【短編】
若者はカウンター席に座ると大きなリュックは足元へ無造作に置き、



「マスター、珈琲ちょうだい。ホットね」



と、言った




私が呆気に取られた顔をしていると




「悪かったって。閉店なんだろ?
だけど、今日だけは頼むよ
一日中、歩きまくってヘトヘトなんだよ。頼むからさ。なっ?」




ベラベラと勝手に喋る若者に促され
私は漸くカウンターの中へと入り
一連の流れでゆっくりと珈琲を淹れた




店内に珈琲の芳ばしい薫りが漂うのは
いつぶりだろうか
ふっと笑いが込み上げる
ここは喫茶店だというのにな





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