たった一つのお願い


俺はそれは違うのではないか、と思う。




「だったら、そんなに素敵な奥様や大事な娘さんを授かった事も取りこぼしてばかりと分類するんですか?」



「それは…」



「大切な人を手に入れたから取りこぼしてしまうんです。ですがそれを嫌に思うなら、最初から手に入れなければ良い。
貴方は彼女達に出逢えた事を後悔しているんですか?」




俺は春陽に出逢って後悔した事など一度も無い。
コレは誇って言っても良い。




「私は…私は………」




「過ぎた事を悔やんでも仕方ありません。
だから、今度は悔いが一つでも少なくなるよう、仕事を減らして春陽との時間を作りませんか?」



「本当に……君は…」




「俺にもその手助けをさせて下さい」




我ながら、かなりの名案だと思った。
< 102 / 264 >

この作品をシェア

pagetop