たった一つのお願い
ここは一階。
受け付けに喫茶店、売店、小児科…とある。
主にここは入院患者が来る場所ではない。家で風邪を引いた、とか家から時たま通院して来る患者がここへ来る。
ここの病院は階で取り扱う器官が分かれていて、俺の循環器系内科は4階。
あの子は501号室と言っていたのと、祐司が担当医ということは脳神経外科だ。
因みに3階は消化器系で、二階は泌尿器系だ。
坂井祐司(28)
俺と同期でアイツは脳神経外科に勤めている。
たまに都合がつくと飲みに行ったりする仲だ。
大学時代からの知人で俺が唯一居心地が良いと思える仲でもある。
だが、専門的ではないにしろ多少知識はあるが…脳は未だに解明出来ていない部分が多い。
あの子も難病を抱えているのだろうか?
こんな大きい病院に来るぐらいだから……いや、よそう。あまり空想でこういう事を考えるのは良くない。というより考えたくない。
そもそも5階なんて足をあまり運ばないからな…
顔を出せ、と言われても俺が行けば不自然じゃないか?
あー…というより俺は何で行く事前提で考えているんだ?
あ、マズい。
チラリと時計を見ると休憩時間を少し過ぎてしまっていた。
俺は午後の診断をすべく、急いで階段を上がるのだった。