たった一つのお願い
「理央って私と居るときよく考え事するよね」
「そうか?」
むしろ考え事が頭から抜けて困っていると先程思い至ったばかりなのだが。
「そんなに何考えてるの?」
「いや…特に何も」
今さっきは確かに自分への阿呆ぶりを考えていたが、春陽と居るときに考え事をする余裕は俺にはないのだが。
彼女は一体何を見てそんな事を言うのだろうか?
「だって理央、私が話してるのにたまにボーっとして反応鈍い時あるよ?」
「あぁ……そういう事か」
それは、きっと考え事ではない。
祐司を見るといつもの爽やかな黒い笑みで俺を見つめている。