たった一つのお願い
「兄が医者だったからだ」
「お兄さん?」
もっと気の利いた感動する話を出来れば良いのだろうが…生憎俺には出来ない。
「分野は違うが…この科にしたのも偶々循環器系についての知識関連の本を沢山読んでいたから選んだだけだ」
「へぇー」
どうしてこんな話でそんな興味深そうな顔が出来るんだ?
「兄と比べられるのが嫌で、ならいっそ同じ職業なら文句も言われないだろう…と」
「でも今はこの仕事で良かったって思ってるでしょ?」
「っ!」
「理央見てたら分かるよ。
それに変わり者の理央が仕事に関して私に一切愚痴言った事ないしね」
…心の中では散々言ってるがな。
でも確かにそうかもしれない。