たった一つのお願い
「三神先生ー」
「あ、はい。今行きます」
翌朝。
いつもと変わらず時間は過ぎる。
止まれと願った所で止まってくれるものではない。
あの後、結局お喋りで終わってしまった。
春陽が途中で疲れて眠ったので俺はどうすることもなく、ただボーっと本を読んでいた。
相変わらずの忙しさで、今日も気づけばとっくにお昼の時間は過ぎていた。
「三神先生って最近優しくなりましたよね?」
仕方なく今日はコンビニのパンで済まそうかと考えていると、まだ診察室に残っていた付き添いの看護師に突然言われた。
「そうですか?」
そんな事考えた事もなかった。
しかも俺に“優しい”だと?
今まで堅物だの仏頂面だの散々言われてきたが、優しいなんて言われたのは初めてだ。