たった一つのお願い


「理央君は、春陽との未来を考えるのが恐いんだね」



恐い?


そんなわけがない。
恐いとは本来そもそも何かに対して怯える事だ。


俺は何が起こるか分からない未来に不安ならともかく恐いだなんて思った事はない。
こんな無自覚な恐いだなんて恐いとは認めない。


恐いという感情はすぐに実感出来る感情の一つだ。好きとかそういった感情とはわけが違う。




「理央君、確かに今も大切だ。私は恥ずかしながらそれを理央君に教わった。
だけれどね?
未来を見据えて悩んで考えていく事もまた大切なんだ」




だけど。




「どれか一つではなく、春陽の未来を含めて考えて全ての時制を考える事が大切なんだよ」




だけどどうして俺は反論の言葉が出ないのだろうか?
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