たった一つのお願い


だが今日はさすがの俺も名誉挽回しなければならない。


父親に聞きそびれたなら、本人に聞くまでだ。




「春陽の指は細いな」



「そう?
あ、でもお母さんの指より私ってワンサイズ下なんだよ」




遺品の整理の時にお母さんの指輪を嵌めたら一回り大きくてブカブカだったと彼女は笑って言った。




「へぇー…お母さんのサイズって何号なんだ?」



「確かね…8号」



「ってことは春陽は7号か。やはり細いじゃないか」



「んーそうだね。そうなるね」




彼女は自分の指先をジッと見つめている。


それがあまりにもなまめかしかったから。




「っ……何するの!?」



「キスしておいた」




まぁ、一発ペチッと頬をその手で叩かれたけど。


…地味にコレは要らないと言って俺のキスを返されたという事なのか?
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