たった一つのお願い


翌日の俺はやけに動悸がした。


朝からずっとだ。
コレは春陽に告白をした時の比ではない。
おかしくなりそうだ。


婚姻届の紙と指輪。


それぞれポケットの両方に入れてある。


昼休み。春陽の病室の前に行くと胸がさらに高鳴る。
ここまでくると心臓に悪い…



俺は一度深呼吸をして、部屋をノックした。
少し力が弱すぎて小さな音になってしまった。



いつもの冷静ぶりはどうした。
手術でもこんなに慌てた事ないぞ。



ハイと声が聞こえたので中へ入る。彼女に俺の様子がおかしい事、いきなりバレないだろうか?


そうして彼女の座るベッドの前に立ち、対面する。緊張のしすぎで手が冷たい。
そしてそんな俺に彼女がかけた一言はこうだった。
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