たった一つのお願い
「“魔性の男”」
「は?」
それを言うなら魔性の女だろ。
だが、それ以前にだ。
俺はその手の噂で問題になる事が嫌だった。
浮気だとか二股だとか同じ講義を受ける奴の好きな相手を好きになるとか、とりあえずそんなゴタゴタはゴメンだったから、真面目を通していたのに、だ。
だから学内の女に手を出さなかったのに、だ。
「何故そんな噂がたっていたんだ?」
聞いてみたものの、心当たりは一つしかない。
すると予想通りの解答が返ってきた。
「俺が広めちゃった!
“アイツ、外ではかなり遊んでんぜ?”って。そしたら、女の子達に火をつけちゃったみたいで」
……だからか。
適度なお付き合いしかしないはずの俺に告白が絶えなかったのは。
普通ならこんな奴ゴメンだろう…と不思議に思っていたのだが、漸く分かった。