たった一つのお願い
もしかしたら気に入らなかったのか?
それとも結婚したくないのに指輪なんて要らないとか?
貰ってもただの迷惑、だったとか?
「………私なんかが、付けてても良いの?
理央と結婚しないって言ってる女だよ?」
どうやら違ったみたいだ。
俺の考えとは反対の回答で安心する。しかし、返答の内容が気に食わない。私“なんかが”とは何だ。“なんか”とは。それにそこまで結婚しないと繰り返さなくても良いだろう。苛つく。
「………だが男除けにはなるだろ」
「ふっ……それを言うなら理央の方が危ないじゃんか。私はここからは出られないんだから」
…俺は職場で散々春陽の事をからかわれていて最早相手にされていない、とはさすがに言えないから黙秘した。
「俺は大丈夫だ。だから、きちんと付けおいてくれ」
すると彼女はモソモソと動き、ベッドの横の奥の引き出しからそれを出して付けてくれた。
「ありがとう」
「ん。春陽は俺の彼女だから。それを忘れるなよ」
やはり彼女には涙よりもこちらの笑顔の方が断然似合う。