たった一つのお願い


「…………お」




ん?




「理央!…あ、起きた。
お越したら悪いとは思ったけど、夜中の8時過ぎてるよ?」




窓の外を見ると真っ暗で、月と星がいくつか見えた。


…どうやら俺は春陽の病室で眠ってしまっていたらしい。

因みに何故彼女が8時にこだわったかと言うとここの病院の面会時間が夜8時までだからだ。




「……そうか。春陽のお父さんに挨拶しそびれてしまったな…」




彼は夕方過ぎにここへ来ると言っていたのに。




「お父さんが理央君疲れてるからわざわざ起こさなくて良いって」




しかしあまりにも失礼すぎる。…明日謝らなければ。


それに最近は仕事も楽だったはずだ。
あぁ…きっと寝つきが悪かったのだろう。自覚あるぐらい眠れなかったから。
それが病院の硬い椅子の上でなら…とか。否、きっと春陽が傍に居たからだ。
そう考えに至って俺は子供かと思い直す。
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