たった一つのお願い


「それは宮ちゃんとか居るのに……」



「つまりは誰も居なければ良いのか?」



「っ!……いや、その……うん…」




素直な彼女がまた俺の胸を高鳴らせる。


そういう事か。
それなら朝のキスはしておくべきだった。


夜はダメだ。キスが止まりそうにないし、俺も男だ。春陽の身体に負担をかける気は全く無いのでそういう事はしないが、変な気分になってしまう。




「すみませんが、五分だけ席外してもらえますか?」




俺は未だ唖然としている春陽のお父さんにお願いした。




「ちょっと理央っ…!!」




春陽が言ったんじゃないか。何をそんなに引き止めようとするんだ?




「……よくもまぁ……父親の前で……君は凄いね…」




そう言うと彼はゆっくりと立ち上がり外へ出て行ったので、俺は五分きっかり有効に使わせてもらった。
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