たった一つのお願い
「「二人で小旅行!?」」
春陽と彼女の父は声を揃えて同じ顔をこちらに向けた。
翌日昼休み。
彼女達と顔を合わせるや否やそう提案した。
「えぇ。春陽が退院したら俺も長期休暇を取っているのでその時に。二泊三日で考えています」
「しかし……」
「行きたい!…お父さんダメ?」
娘に言われたら弱いようでうぅーん…と彼は唸っていた。心配なのだろう。
「安心して下さい。負担のかかるような遠い場所へは行きません。もし万が一のために近くに病院もある所です」
昨日ネットで調べておいた。地理的にも問題ないだろう。交通機関も電車で30分、タクシーで10分の所だった。これぐらいなら大丈夫なはずだ。
「それに春陽の貞操は守りますから」
「当たり前だ!
……まぁ、そこまで条件が揃っているなら…行っておいで春陽」
「ありがとうお父さん!」
…春陽は俺に笑顔が素敵だと言うが、それは彼女自身の方ではないか?と最近益々思うようになった。
こんな笑顔を見せられたら、誰も何も言えないだろう。
現に彼女のお父さんも渋っていた顔が今は優しい笑みを零している。