たった一つのお願い


「三神先生?
どうされたんですか?何だか嬉しそうですね」




――現実に戻れば俺はいつもの仕事場に居た。


しまった。
また手が止まってたのか。



小旅行の許可を得てから、どうやら俺は浮かれているみたいだ。
しかも側に居た看護師に指摘される始末。…重症だ。




「…やはりそう見えますか?」



「えぇ。何だかそわそわして楽しそうな感じを受けました。…あ、もしかして春陽ちゃんが退院してどこかへ行く計画でも立ててるんですか?」




――女性の勘って本当に侮れない。


しかも、俺は自他共に認めるひねくれ者だったはずだ。それなのに見破られるだなんて…いつからこんな分かりやすい単純な奴になってしまったのだろうか?
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