たった一つのお願い
「春陽」
俺は、今気付いた本音を語りだす。春陽の一言で俺は漸く分かった。
「確かに俺は春陽を気遣いながら旅行してる」
「やっぱり…」
「だけどそれは俺にとって負担ではないんだ」
彼女が好きそうな場所。彼女に負担のかからない交通ルート。彼女がくつろいでたくさん笑える雰囲気。彼女のお箸がすすむ食事。
全部、春陽に合わせて旅行プランを立てた。だから、春陽の言う事は間違っていない。
だから否定出来なかった。
でもその気遣いは…俺にとっては必要不可欠なものなんだ。何故なら、
「…俺にとっては、春陽が楽しんでくれる事が俺の楽しいの条件なんだ」
つまりは春陽、俺も同じ考えなんだ。
ため息ばかり吐いていたのは不満のため息なんかじゃない。
「俺のため息は安堵のため息だ」
彼女が笑う度、俺は嬉しくなって思わずため息が零れていただけなんだ。