たった一つのお願い


「…園田君は、授業に戻らなくて良いの?」




体操服姿に、額には汗をかいている。今の男子の実習科目は持久走とバレーだから、きっとこの運動場に居るってことは持久走の途中のはずだ。コースから逸れたこんな所に来るなんて…彼は先生に何て言って抜けてきたのだろうか?





「あぁ。実は膝擦りむいてさ。洗いに来た」





そう言いながらジャージの裾を少し捲り上げて怪我を私に見せてきた。確かにジャ-ジの膝の辺りには泥が付いていた。




「えらく派手に転んだんだねー」



「まぁ、ちょっとよそ見してたからな…」



「え?」



「いや、何でもない…」





変な人だ。
私に話しかけてくるのもそうだけど、こんなわざわざ遠い洗い場まで来るなんて。

確かにココは花壇があるけれど、水やりのための水道がここにはある。だけどここは運動場のトラックからは少し離れた場所にあるんだ。
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