たった一つのお願い
「ねぇ、祐司先生、私はいつになったら退院出来るの?」
検診の日。私は祐司先生に何気なく尋ねてみた。
「そうあなぁー…もう少ししたら退院だけど、春ちゃんの場合はまだ無理だな…」
「どうして?」
「…いつか言わないと、とは思っていたんだけどな…」
何故だか私の心臓は嫌な感じに高鳴る。悪い予感がしたんだ。
そして、その悪い予感は見事的中していた。
「…春ちゃん、癌にもかかってるんだ」
祐司先生は顔を曇らせそう私に告げた。
一瞬、頭が真っ白になる。そして動揺を隠しきれない声で真っ先に思いついた疑問を口にした。
「…お父さんは…その事、知ってるの…?」
「知ってるよ。それで、一旦一時帰宅も出来ますがと聞いたけどそれを知ってお父さんは春ちゃんを病院に置いてきちんと看てやってくれって頼まれたからね」
「…お父さん、泣いてた…?」
私がそう言うと祐司先生は優しく私の頭の上に手を置き、答えてくれた。
「娘を心配しない親なんて居ないよ」
それはひどく優しい声だった。