たった一つのお願い


「本名は“春陽(ハルヒ)”って言うんだよ」



「そうか。温かい名前だな」





今までとは明らかに違う優しい顔でそう言われた時、私の心臓が何故かドクリと跳ね上がった。


…あれ?何で?


その時はそれぐらいにしか思っていなくて。
理央がカッコ良いから、ドキドキしてるだけなんだと思ってた。イケメンさんには耐性がないからだと思ってた。



だけど、宮ちゃんに龍の名前を出されて私は何故か慌ててしまって前に誕生日プレゼントだと言ってもらった髪留めの話をしてしまっていた。

あー…理央には全く関係のない話なのに…と言った後で内心凄く後悔していた。





「そうか。よく似合ってる」





そう言って優しい声で答えてくれた事に何故か、がっかりしてしまって。

だから、龍の話題は出したくなくて話を変えて理央の名前を聞く事にしたんだ。





「俺は三神――三神理央(リオ)だ」




そして名前を聞いたとき、何故か胸がキュウっと熱くなった。


私、変だ。
< 245 / 264 >

この作品をシェア

pagetop