たった一つのお願い
そして龍がお見舞いに来てくれる日を迎えた。
龍も最近はバイトや部活で忙しくて病院に来れる日も少なくなっていた。
私は、本当に龍に迷惑をかけてばかりだ。
「龍は学校楽しいんだね?」
私は横の椅子に腰かけている龍に語りかける。
「あぁ。でも、春が居ないから物足りないや」
…やっぱり、龍の言葉に私はドキドキしなくなっていた。
いつからだろう?
いつから私は龍の言葉に何も感じなくなってしまったんだろう。コレは、理央と出会う前から思っていた事だった。
「ふふ。龍は口が上手いよねー」
「は!?本音だって!」
そう、龍はいつでも正直なんだ。私に対しては嘘を吐かない人なんだ。
「はいはい。ありがとう」
だから、
「…春?どうしたんだ?具合悪いのか?」
俯く私に心配そうに声をかけてくれる龍。
そんな人だから、
「―――龍、やっぱり別れよう」
「!!」
もう、この人の優しさに甘えてはいけないんだ。