たった一つのお願い
俺が目当ての501号室へ辿り着き、ノックをすると中からすぐに返事が聞こえた。
ドアを開けるとそこは個室で、広く閑散としていた。
「あ、理央先生!本当に来てくれた!」
俺の顔を見た途端、華やいだ笑顔。
純粋に映る瞳。
短くつややかな髪。
どれも珍しくないはずなのに、何故かそのパーツに心奪われる。
「理央先生?
私の顔に何か付いてる?」
「いや…何でもない」
気になった、というのはさすがにマズいだろう。
俺にも分別ぐらいはある。言って良い事と悪い事ぐらい分かる。
「ねぇ、理央先生。
理央先生はいつもどこでお仕事してるの?」
この階に居たら、気づいてるはずだと彼女は言った。宮ちゃんに聞いたら教えないと言われたそうだ。
どうやら宮野さんはきちんと節操があるらしい。
まぁ、いずれ調べられたらバレる事だしな。構わないか。