たった一つのお願い


「もっと不甲斐ない奴だってここなら責める所じゃねーの?」



「そんな事ない!龍も今、言ったでしょ。まだ高校生だって。こんな重い病気を抱えている奴を受け止められる方がおかしいんだよ」



「…そっか、春、ありがとうな。短い間だったけど俺も春と一緒に居て楽しかった」






最後に、1つ良い?と龍が尋ねてきたので私はコクリと頷いた。






「春の好きな人って…ここの病院の人?」




「…うん」







カッコ良くて優しいお医者様だと私は心の中で呟いた。







「そうか。頑張れよ」






頑張るも何もそれ以前の問題なのだけれど。

龍にその事を言うのはやっぱり甘える事になってしまうと思い、私は笑顔で返して頷いた。




龍が出て行った後の病室は酷く閑散としていて。

自分の胸の痛みが余計に私を締め付けた。




でも、コレで良かったんだ。明日から私はどう接したら良いんだろう…




その日の夜は久しぶりに涙が零れた夜だった。
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