たった一つのお願い
―――振り返れば、とても誰のためにもなっていないとってもワガママな人生だった。
人にたくさん迷惑をかけて
それを何度もバカみたいに繰り返して
それでも自分自身にまで嘘ついて
結局皆を傷つけてしまった
…そんな人生だった。
思い出せば思い出すほど、自分の愚かさが浮かび上がる。
でも、そんな私を理央は好きだと言ってくれた。
キスもたくさんしてくれた。
目に見えない愛をいつも感じさせてくれた。
『俺は、絶対に春陽を幸せにする。悲しい涙は流させない。そんな顔は二度とさせない。何かあったらすぐ駆けつける』
その言葉は私にとってまるで魔法のようで、こんな私でももっと生きて良いのだと背中を押された気分だったのだ。
きっとどこかで生への希望を諦めていた私にもっと生きたいと、もっとここに存在したいと、この世界がこんなにも愛しいものなんだと気付かさせてくれた。
何故ならきっとそれは…
「春陽!」
―――そう、“春ちゃん”でも、“春”でもない私の“春陽”という名前をいつもこうして優しく心地よく呼んでくれるから。
だから、私はこの声に答えたくて、白い何もない閉ざされた世界から光が差し込んだ先に手を伸ばした。