たった一つのお願い
目をかすかに開けるとそこは眩しい世界だった。
私の大好きな人達がそこには居た。居てくれた。
あぁ、私は幸せ者なんだ。
「春陽!」
私のお父さんがとても苦痛な表情で名前を呼んでいる。
目からは涙が零れていた。
…あーあ、やっぱり私は親不孝な娘だよなぁ…
それでも、もう、私はこの世界に存在する事は出来ないだろうから。
自分の命がもうそこまでだと分かるから。
“お父さん、ありがとう――――…”
この言葉がきちんと届いたのか分からない。
なんだか息が苦しくて声も上手く出ない気がする。頭もぼんやりしているのだ。
目も全部開けていられない。
私の今の状態はソレだった。
それなのに、
「春陽!俺はまだ春陽と…春陽に…」
あぁ、いつもの理央先生が台無しだ。
こんな顔もするんだなぁ…理央先生。
でもね、私はワガママだから。
“ねぇ、理央。お願いがあるんだ―――――…”
そんな私のワガママなお願いをどうか聞いて欲しい。