たった一つのお願い
切愛3
くそっ…!
何で今なんだっ…まだ、余命は、余命の時間はあるはずなのに…!
「春陽!春陽!」
こんなにも大声を出したのは何時ぶりだろうか。
それでも、この声はどんどん脈が弱り、衰弱していく彼女には届かない。
祐司も、看護師も、もう、何もなす術はないと言ったようにもう動かない。
ただ、病室で俺が懸命に叫ぶ姿を黙って見ていた。
「――、―――――…」
「「!!」」
その時、春陽が少し目を開け何かを呟いていた。
俺は顔を寄せ、その言葉に耳を傾ける。
その言葉を聞いた春陽のお父さんは泣き崩れてしまった。
でも、春陽の吐息がまだ微かに聞こえたから、次の言葉を俺は待って拾う。
彼女が息も絶え絶えに言ったその言葉は、本当に俺にとっては残酷だった。
彼女が言ったたった一つの最期の願い。
それは、苦しいはずの彼女がこの世の誰よりも美しく微笑みながら言ったたった一つのお願いだった。