たった一つのお願い
―――――――――――――――
―――――――――
―――――
「あれ?三神先生、その机の青い鶴、どうしたんですか?」
久しぶりに定期検診へやって来た患者さんにふと尋ねられる。
「あぁ、コレですか?コレは彼女からの大切な贈り物なんです」
たった一つの祈りなんだ。
それはあまりに残酷で―――けれど残酷なほどに優しい彼女の想いなんだ。
春陽が亡くなって随分経つ。
だけど、未熟な俺はまだ彼女のそんな願いをまだ叶えられていない。
今はまだ。
彼女の望む笑顔にはほど遠い。
あの日叶えられなかった彼女のたった一つのお願いを
今日こそは叶えようと思いながら日々を過ごしている。
―終―