たった一つのお願い
見解2
「…………」
次の夕方。
俺は扉の前で固まっていた。いや、躊躇っていた。
何故かは分からない。
いや、嘘だ。理由はきっと分かっている。
二人の、楽しそうな声が聞こえてくるからだ。
『龍は学校楽しいんだね?』
『あぁ。でも、春が居ないから物足りないや』
『ふふ。龍は口が上手いよねー』
『は!?本音だって!』
『はいはい。ありがとう』
―――二人の、せっかくの時間を壊したくない。
こんなに明るい二人だけの世界がある。
俺には今まで知り得なかった世界。
こんなにも優しい言葉で笑い、こんなにも温もりのある空気を醸し出せるんだな。
俺が知らない、春陽ちゃんの声だ――…