たった一つのお願い
ノックしようとしたまま、結局俺は出来ずそして動くことも出来ず、ただひたすら突っ立っていた。
中からは二人の会話が途切れる事なく、楽しそうに続いている。
俺は目を閉じ、扉の横の壁にもたれかかっていた。
その時ポンと肩を誰かに叩かれる。
目を開けずとも大体俺は予測出来ていた。
「どうだ?自覚したか?」
ゆっくり目を開けるとやはり祐司の顔がそこにあった。
俺は笑いながらゆっくりと答えを紡ぐ。
「今度の酒代は俺がもつ」
――こんな自分、もう笑うしかない。