たった一つのお願い
次の日。
朝から俺は有り得ない動悸に苛まれ、さらにその動悸は彼女の病室の前へ辿り着くと、早くなった。
……結果は分かりきっているはずだが。俺は小学生か。
何度も振られた時のシチュエーションを頭で思い浮かべ、大人びたまま去る。――コレが俺の最大のベストだろう。
赤くなったり、噛んだりする事だけは避けたい。彼女に動揺する無様な姿を最後に見せたくはない。きちんと“理央先生”として、只の変わり者の医者として記憶の片隅にあるか無いかの程度にしておきたい。
間違っても、あぁあのダサい医者…にはなりたくないんだ。
ハァ…コレを何回考えれば気が済むんだ。
何度吐いたか分からないため息を零し、俺は意を決してドアを開ける。
…しまった。ノックをするのを忘れた。
どれだけ余裕が無いんだ。
こんな俺を男前だと評価した祐司にも呆れる。
でも一番に自分自身が自分に呆れる。