たった一つのお願い


「……私みたいな病気持ちが……って」



「気にする事はない。
春陽の病気は必ず治るから」




手術は辛くても、後遺症は残っても、必ず治るのだから。




「それを言うなら俺の方だろう?」



「先生が……?」



「十歳も年上のオジサンで、しかも患者に手を出すんだぞ?」




家での出迎えも

温かいご飯も

病院内での噂も



あんなに理想を掲げていたのに。

俺が好きになった相手はまるで正反対だ。

しかしそれさえも構わないと思っている俺は、少し前の自分からしたら笑い者だろうな。




「―――こうやって」




そして俺はそのまま彼女の唇を奪った。


自分から、は初めてだ。
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