たった一つのお願い
「それで…私の知らない学校世界を語ってくれる龍は本当に楽しそうだから……「春陽!」
口を止めない彼女に俺はとうとう大人気なくも強く呼びかけ、強制的に止めさせた。
「――足りないなら、もう一度してやる」
俺は怒りに任せて彼女の唇を奪う。
今、俺の中には黒い感情しかなかった。
「今は、俺だろ?」
漸く唇を離した後、俺は言った。
彼女は息も絶え絶えで苦しそうだ。
「過去は過去だ。気にならないと言えば嘘になるが、大事なのは今だ」
春陽の過去の男の話なんて聞きたくない。
「俺は今、春陽が傍に居てくれれば良い」
それ以外は望まない。
傍に居てくれるだけでこんなにも安心する。
「……うん。ごめんね先生…ありがとう」
私さっきかなり嫌な奴だったね、と言って彼女は苦笑いした。