たった一つのお願い
ここの病院の消灯は22時30分で、現在は0時だから今日も余裕で春陽は寝ているはずだ。
実際何度も見に行ったが、この時間は必ず寝ている。
病院でのお泊まりの利点はここにある。
今まではソファーに寝るだなんて身体の疲れが完璧に取れないから、どれだけ疲れていても必ず帰宅していた。
だが、今は悪くない。
――コレも心境の変化、という奴だな。
自分に呆れながらも階段を上り、行き慣れた部屋へと足を運ぶ。
静かにドアを開け、こっそり中へ入る。
真っ暗が苦手で、傍の電球を点けている事により、ほのかに見える彼女の寝顔を拝見する。
俺は彼女の髪にそっと触れ、起こさない程度の軽く触れるキスをして今日も病室を出た。