たった一つのお願い
俺は予め、春陽の携帯からお父さんの写真を確認しているので顔は分かる。向こうも春陽が俺の写真を携帯で撮り、メールで送ったから分かっているはずだ。
春陽のお父さんはきっかり21時に現れた。
「……君が三神理央君だね?」
「はい。娘の春陽さんとお付き合いさせていただいています」
立ち話も何ですから場所を変えましょうと言ったのだが、彼は笑顔で首を振り俺にこう言った。
「単刀直入に言います。
春陽と別れて下さい」
―――いきなりそうきたか。