たった一つのお願い
第三章
懇願1
「まぁまぁ、そう落ち込むなよ」
「これで平静に居られる方がどうかしている」
「ハハハッ…動く石像がよく言ったものだな」
「…………」
いつもなら反論しているが、今はその気力すら起こらない。
今日は久しぶりに祐司と飲みに来ていた。
あれから春陽と春陽の父親の連絡先を聞き、春陽にはもう少しだけ待ってくれ、とメールしたきり。
認めてもらうまで文明の利器を利用して連絡し合うのも反則だろう。
が、
「…何故逃げるんだ………?」
春陽の父親が一向に捕まらない。
俺の連絡に出ない。
家にも連絡したのだが、出てくれない。
祐司が仲介して春陽に俺の連絡先を父親に知らせたはずだから分からないはずがない。
「……こうなったら、直接会いに行ってやる」
「お前酔ってる?」
「本気だ。祐司、家教えろ」