たった一つのお願い


「で、ご用件は?」



「分かっているでしょうが、春陽さんの事です。
お付き合いを認めていただきたい」




すると彼は深い溜め息を吐いた。




「私は貴方に認めてもらうまで何度でも伺い、お願いします。私には春陽さんが必要なんです」




たとえすぐに儚く消えてしまう身だとしても。


彼女の言葉に。
彼女の笑顔に。
彼女の仕草に。


こんなにも、魅了されたのだから。




「――娘めがね、私に貴方の連絡先を知らせる以外で一通メールを送って来ました」




ということは、俺が会うなと禁止された後の事か。




「仕事に明け暮れ、娘が末期の癌に侵されるまで気づけない最低な父親にあの娘は私に対して何一つ文句を言った事がなかった」
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