たった一つのお願い


そう言った春陽のお父さんは痛い程に悲しんで見えた。




「むしろ私に弱くてごめんなさい…と……私には過ぎた娘です…」




彼の頬には一筋の涙が伝う。




「そんな娘が貴方と会った日の後、私にメールでこう言ってきました…」




『私、理央とは別れたくない』




「っ!!」




「今まで我が儘を言った事はなかった…
前の彼氏君と別れて君を選んだともそこには書かれていたよ。
その時私は気がついたんだ」




彼は天を仰ぎ、目に手を押し当てている。




「…私は、娘の事を何も知らなかった、と…」
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