たった一つのお願い
春陽に彼氏が居るだなんて知らなかった
娘が辛い病に侵されているだなんて知らなかった
娘がそこまで誰かを好きだなんて知らなかった
「……知らなかった、では済まされない事ばかりを私は娘にしていたんだ…」
「…………」
「だからせめて社会経験の少ない娘はただ一時の恋に溺れて利用されているだけだと思い、君と別れてもらおうと思った」
「そんなつもりは…」
「分かっている。君が本気だとは今日で確信したよ。だけどね…それとこれとは話が別なんだ」
違うんだ…ともう一度彼は呟いた。
「娘にどれだけ軽蔑されようと、メールで読んで知った彼氏君の二の舞になるのではという考えがどうしても頭から離れなかった。それならいっそ…と」
「…………」