たった一つのお願い
説明会の日。
俺はおよそ二週間ぶりに春陽のお父さんに出会った。
彼は前よりさらに少し痩せている気がした。
きちんと説明会に出席する事は確認をしているので二人にはもう驚かれなかった。
最初は春陽に散々拒否され仕事しろと言われたが、父親の了解をすでに取ったと言うと漸く彼女は折れてくれた。
「春陽、久しぶりだな」
「そうだねー
お父さん痩せた?ちゃんと食べてる?」
「私は強いからな。大丈夫だ」
そうやって頭を撫でる姿にあぁ、親子なんだな…と当たり前の事を思ってしまう。
何を今更と感じるが、こうした血の繋がりを羨ましく思った。
別に俺の家庭がどうとか言うことではない。離婚等の問題は何もない。平凡で普通の家庭だ。仲の良さも…幸せな程度の一般具合だ。
だが…何か良い、と思ったのは事実だった。
未だにその気持ちはどこから来ているのかは分からないが。
春陽の事だからな。
また、今までにない感情から生まれたのだろう。
それはいつか分かる事を学習した。
だから、答えはそのいつかに取っておくとしよう。