たった一つのお願い
「…あれ?
部屋にそんな鶴置いてあったか?」
「あ、それね。
理央が睡眠時間削って作ってくれたの」
………俺が睡眠時間を削った事、バレてたのか。
隈は隠しようが無いからな…
せめてタオルで冷やして目を休ませるぐらいはしておくべきだったか。
とりあえずこちらを振り向いて驚く春陽の父親に、苦笑いを浮かべておいた。
「…もしかして私と会った時の隈は……?」
「気にしないで下さい。仕事です」
本当に仕事を片付けていたのは事実だ。
ただ、少しだけその後に鶴を1日40羽ずつ折っていたに過ぎない。支障はない。
「ね?
お父さん、私愛されてるでしょ?」
「あぁ…私が悪かった。
本当は会った時から少しだけ分かってはいたんだ」
あんなにも拒絶されたのに?
…いや、過去を責める気はないがやはりそれはどうかと疑ってしまう。
「理央君が、ショックを受けて思わず鞄を落とした事、覚えているかい?」