たった一つのお願い


確か…そうだったか?


頭の中であの言葉が何度も反芻されていた事しか記憶にない。
深く、動揺した事も覚えているが。




「……すみません」



「ハハハ…いや、良いんだよ。
だけどその時中が見えてしまってね。偶々気づきたくなかったのに目についてしまった」



「………そういうことですか」




俺はこの人が何を言いたいのか分かってしまった。
きっと二回目に会った時も、それで彼は諦めたような…そんな顔をしていたのだろう。




「何が入ってたの?」



「春陽は知らなくて良い」




…あまりそう言うのは苦手だ。


何故か俺ばかりが想い過ぎて重い気がするから。


まぁ、間違ってはいないから仕方がないのだが。
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