たった一つのお願い
俺達二人は館内にある喫茶店へ向かった。
あそこならゆっくり落ち着いて話せるだろう。
「…それで、私にお話とは?」
「えぇ。もし、宜しければですが、私も春陽の治療費をいくらか払わせていただきたいと思いまして」
「え……?」
コレは少し前から考えていた事だった。
だが、踏ん切りがつかず今まで迷っていた。
俺がこんなにもでしゃばって良いのか、と。
だが、手術の説明会まで同行させてもらった今はここまできたら図々しいもくそもないという結論に至った。
「私は一人暮らしですし、仕事ばかりでお金のかかる趣味もありません」
強いて言うなら読書ぐらいだ。
…まぁ、最近は趣味の本も医学書ばかり読んでいるが。