たった一つのお願い
「だが…ご両親の仕送りとかあるだろう?」
「問題ありません」
俺には上に兄が居る。
俺の兄も医者だ。しかし、専門は精神科だから俺とは全く違うが。
俺の仕送りが少し減った所で支障はないはずだ。
いつも物欲があまりない俺は日頃の電話で送りすぎだと言われているしな。
「それでもやはり…」
家に上がらせてもらった時、春陽のお父さんはコーヒーは無いと言った。
別段気にも止めなかったが、今思えば彼はそれを買える程余裕のない暮らしをしているのではないだろうか?
そして痩せている身体。
――充分な暮らしをしているとは考え難い。
二回の手術代に入院費に治療費…決して安くはないからな。
医者の俺が一番よく分かっている。