たった一つのお願い
しかもここは結構地方でも名のある大きな病院だ。
他の施設よりも快適な分、費用は高い。
「お願いします。
私は――…俺は、自分の大切な人のためにお金を使いたい」
「あ、頭を上げてくれ……
私は君に酷い事ばかり言ったんだ……コレぐらい父親が出来なければ私は本当に…妻に顔向けが出来ないと……そう、思っただけなんだ……」
俺が頭を上げると、彼は悲しげに微笑んでいた。
…この顔、少し春陽に似ている。
「実は妻も…癌で…亡くなったんです」
「、」
「私は…何も出来ない奴で……大事な物は全て取りこぼしてばかりいるんです…」
ポツリ、ポツリと彼は語り始めた。