今日、君にさよならを告げよう
優しく、菜月の頬に手を伸ばした。
…けれど、伸ばした手が、彼女のぬくもりに届くことはない。
するり、と再び空を切った僕の手。
指先は、彼女の向こう側。
「和馬…っ」
「ごめんね、菜月。もっと早く、言えば良かった。……だけど、言ってしまった
ら、君がここから消えてしまうような気がしたんだ」
僕の想いを告げることが、君を僕の傍から解放する呪文のような気がしていて。
「……ずっと、好きだったんだよ」
菜月が、涙を流したまま、呟いた。
「ずっとずっと。本当に、和馬のこと、好きだった」
「……僕も、好きだよ」
僕がそう言うと、菜月は、ぶん、と強く首を横に振った。