今日、君にさよならを告げよう
菜月と紗月
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「あら、和馬君。来てくれてありがとう」
「…こんばんは、おばさん。おじゃまします」
菜月の家に上がると、そのまま迷うことなく仏間へ進んだ。
「……おう」
「……浩樹」
すでに線香を上げ終わっていた浩樹が、立ち上がって僕のところに歩いてきた。
「もう、こんなに経つんだな。……ふたりが、いなくなって」
「……あぁ」
浩樹の言葉に、涙を押し込めて頷いた。
さっきまで、ひとりはすぐ隣にいたんだよ、なんて言っても信じてもらえるはずがない。
「一緒に大人になれるって、俺、疑ったことなかった」
「……そんなの、僕だってそうだ」
「……」
黙り込んでしまった浩樹の瞳には、うっすら涙が浮かんでいた。