ももの天然水
「いや!その!変なことしてないから!」

「ぷっ!」

「へ?」

「いつもクールな君なのに慌てることもあるんだね。」

ふわりと笑う紗優。

「ありがと。」

「いや、別に。」

「ねぇ」

顔を下に向けながら言う紗優。

「見た?」

「え?」

「その…傷…」

「あ、うん。」

「そっか。」

か細い声。

「先生呼んでくる。」

なにも言わずに俺の体操服の裾を取る。

「どうしたの?」

「き、聞かないの?この傷のこと…。」

少し震えた紗優の声。

「これ飲んでいいよ。」

机に桃の天然水をおいて、保健室を出た。
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