犯罪コレクターの独白
「よく来てくれたね、秀俊君」

長年の夢が叶った人間みたいに、別所さんは私の訪問を喜んだ。

「これからもお世話になりますんで、宜しくお願いします」

「いやいや、こちらこそ。何かしたいことは?」

私は、持って来た鞄の中から英語の問題集を取り出した。

「あの、英語検定を受けたいんで、その勉強に専念します。六月に受けるのは難しそうだから、十月に照準を合わせて……」

「いい考えだね。けれども、英語検定の一次試験はリスニングもなかったかな?」

万引きするつもりだ、とは口が裂けても言えなかった。

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