ミタマシズメ
「本日は、***航空をお選びいただきありがとうございました。
空の旅をお楽しみいただけますよう、心よりお祈り申し上げます」
アナウンスが流れる。
「もうすぐ、雲見える?」
「うん。見えるよ」
「わぁー!」
いよいよ少女の声は期待に弾んだ。
しかし、そのわずか10分足らず後のことだった。
「バン!!」
無事定刻どおり飛び立った飛行機の後部から、
突然何かの爆音が聞こえたかと思うと、
「ただいま緊急降下中。マスクをつけてください」
というアナウンスと共に、酸素マスクが下りてきた。
何が起こったのかわからないまま、私はそれをひっぱり、
不安そうな顔をして ぬいぐるみを抱いている少女の口元に
先に持っていき、自分のもひっぱった。
「大きく吸って、吐いてごらん」
オジさんがやるように。そうそう。
ーーと、またもやなんの前触れもなく
「パン!」という音が響いたかと思ったら
今度は機体が、グラグラと左右に傾き始めた。
これは、いよいよおかしい。他の乗客もそう思ったのであろう。
機内は一気に不穏なムードに包まれた。