ミタマシズメ
「大丈夫です。落ち着いて、頭を低くしてください!」

と繰り返すCAのアナウンスが聞こえた。

ハッと再び隣を見ると、恐怖のあまりか声も出さず、

少女が涙で顔をボロボロにしながら

グラグラと機体の動きに合わせて揺れているのを見た。

とっさに私はその小さな身体を固く抱き寄せ、

酸素マスクを口に押し当て

「大丈夫だよ。大きく息を吸って、吐いて」と繰り返した。

モウモウと機内を白い煙が包んでいく。

少女は薄く目を開け、ビー玉のような丸い瞳で 私を見た。

「あっちゃん!あっちゃん!!」「あや!!」

後部座席から、彼女の両親の呼び声がする。私は無我夢中で答えた。

「大丈夫です!アヤちゃんは、大丈夫です!!」

何がどう大丈夫なのか。そんなことは自分にはわからない。

けれどもこの幼い少女と両親と、そして自分自身を励ますために

「大丈夫だ」と言い続けることしか、できなかった。
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